Today & Tomorrow
校長 宮阪元子
Motoko Miyasaka
~激変する未来社会にも輝き続けられる人へ~
前例や経験則に頼ることのできない時代が始まりました。これまでも、不透明、不連続といわれていた未来ですが、それが、こんなに突然に私たちの社会を取り巻くことになりました。
気候変動による地球環境への影響も深刻になりつつあります。洪水や山火事などの激甚化する自然災害は、誰にも極めて身近な問題となりつつあり、「回復までに残された猶予期間は、最大でも10年!」との専門家の指摘は、日々説得力を増してきています。
刹那の平穏の中で、現実から目を背けることは難しくなりつつあります。特に、これからの時代を担い生きていくみなさんには、避けられない多くの難題が残され、解決への努力が託されています。
未来を切り開いていくことは決して容易ではありません。地球と人類が直面している大きな課題を抱えながら、その中で個々の未来を創造していくためには、深い知恵と磨かれた力、そして挑戦するスピリットが必要です。しかしながら翻って人類の歴史を見つめ直すと、私たちは、いくたびの困難にも、その知恵と力と思いによって新たな時代を切り開いてきました。みなさんも、きっと成し遂げるでしょう。
科学技術の継続的発展によって、いままでは「不可能」と思われていたことが、次々と可能になってきていることを実感します。さらに、世界と情報を共有し、知恵と力を重ね合わせていけるようにもなりました。みなさんの前には、新しい未来を創り出していける可能性が大きく広がっています。だからこそ、中学高校時代には知恵を磨き、スキルを身に着け、力を十分に蓄えてください。時代を真摯に見つめ、多様な意見に耳を傾けながら、思考を深めて、未来を創り出せる自分自身を築き上げてください。
洗足学園は、困難な現実から目を背けることなく、意義ある学びを推し進めながら、未来社会にも輝き続けられる人を全力で育んでいきます。
~洗足学園中高一貫教育の教育姿勢と特長~
未来に羽ばたこうとする10代に、そのために必要な力をつけることは教育の使命です。これからは、既存の価値と既存の評価を追い求めるだけでは、十分とは言えません。
洗足学園では、状況や志向によって常に自己変革を行えるよう、本質的で偏らない学力と様々な自立的能力を付与することに努めています。特徴的なカリキュラムとして、高校3年生までの全員数学必修体制があります。物事を論理的、科学的にとらえ、データを扱う力を持ち、説明できる力を身に着けることは、これからの時代を生きるすべての生徒にとって不可欠です。そのための基礎学力を身に着けるという観点でも、数学を学び続けることはもはや当然とも考えられます。
一方、答えのない問いに対峙し、自分の考えを他者に伝える哲学的対話を中心とした総合学習、一人1楽器の習得を目指す音楽をはじめとした芸術科目、生徒による行事運営などにみられる高度な自治活動、種々の教養講座(Minerva seminars)などは、学習意欲を引き出し、実戦力を培うのみならず、視野を拡げ、多角的に考え、必要に応じて対応できる柔軟性を身に着けていく上で、極めて効果的に働いています。
集うことの大きな意味の一つに、他者の価値観と出合う、ということがあります。そこでは、もちろん、自分の思い通りにいかないこともたくさんあります。失敗や挫折も経験します。それこそが、学校という場で学ぶ醍醐味です。縁があって同じ場に集った仲間を大切にしてほしいと願っています。「大切にする」とは自分以外の人の価値観を認めて、思いやりの心をもって過ごすことです。
洗足学園は光に満ち溢れた学び舎です。この環境で、生徒たちは、学びを深め、思索を深めます。いろいろなことにチャレンジし、友達と出会い、うれしいことも、悔しいことも、うまくいくことも、失敗も、この場所に集った仲間と経験します。一生忘れられない大切な6年間となります。
生徒たちを見ていると、社会に貢献したいという願いのもと、既存の価値に頼るのではなく、自分たちが新しいものを作り出そうという気概を感じます。実際に卒業生たちの中には既存の枠組みを超えて仕事を立ち上げる者も出てきています。自ら活躍の場を作り出していくという力強さを感じるとともに、働くこと自体に新たな価値を創造し始めているとさえ感じます。女性が新しい価値を作り出していく時代が大きく広がってきています。さらに、これからは世界とコミュニケーションをとり協働していく時代です。そこでは「あなたはどう考えているのか」が問われます。自分なりの考え、それを他者に伝えるすべ、洗足学園の生徒たちは自分自身で考えることを常としながら生活することにより、このような力を身につけていきます。
何よりも、生徒たちには夢や希望をもとに、幸福を感じながら自分らしく道を切り開いていって欲しいと願っています。
『生徒ひとり一人の幸福な自己実現』―これこそ私たち教師全員の最大の願いです。
この鍵はどこにあるでしょうか。
本校を訪れてくれる卒業生に、進路や職業を選択した理由を尋ねると、多くの卒業生たちが「他人に役立つ仕事をしたくて」「周りの人と喜びを分かち合えることを考えたから」と語ってくれます。これこそが幸福を感じられる生き方、自分の能力を発揮して幸福を得られる秘訣ではないでしょうか。
洗足学園でのすべての経験が学びです。これからの社会を作る主役である生徒たちには、学びを深め、多くの友と出会い、多彩な経験を経て、大空を雄大に飛翔する鳥のように世界へ羽ばたいてほしいと願っています。